デジタル化が進む医療業界において、近年注目を集めているのが「電子処方箋」です。日本では、2023年1月に電子処方箋の運用が本格的に開始されました。電子処方箋とは、医療機関が患者様に対して処方する薬の情報を、電子データとして管理・運用する仕組みのことを指します。この電子処方箋の運用開始により、患者様にとって一体どのようなメリットが生じるのでしょうか?そこで今回は、電子処方箋の仕組みと、患者様におけるメリットについてご紹介します。
電子処方箋の仕組み
電子処方箋とは、医師が診察後に患者様に処方する薬の情報を、紙ではなく電子データとして管理・運用する仕組みです。具体的には、国が運営する「電子処方箋管理サービス」へ医師・歯科医師が処方箋情報を登録し、薬剤師はそこから処方箋情報を受け取ります。処方箋の内容や過去のお薬情報を確認した上で、患者様へ薬が用意されます。
画像引用元:厚生労働省Webサイト
患者様における電子処方箋のメリット
電子処方箋の導入により、患者様にとってさまざまなメリットがあります。
1.利便性の向上
紙の処方箋を持ち歩く必要がなく、薬局選びも柔軟になります。通勤・通学の途中や旅行先でも、対応する薬局で薬を受け取ることができるため、時間や場所の制約が少なくなります。また、処方箋情報が電子データとして管理されているため、患者様自身が処方内容を確認しやすく、薬をどこで受け取るか選択しやすくなります。
2.紛失のリスク軽減
紙の処方箋は紛失しやすく、その場合は再発行が必要ですが、電子処方箋ならその心配がありません。処方情報がデジタル化されているため、患者様がスマートフォンなどから直接確認することもできます。
3.薬の重複投与防止
電子処方箋を使えば、患者様が複数の医療機関を利用している場合でも、処方内容を一元的に管理できます。これにより、異なる医師から同じ薬が処方されるといった重複投与のリスクが減少します。また、薬の相互作用をチェックするシステムが導入されている場合、処方の段階で注意喚起が表示され、患者様にとって安全な薬の使用が確保されます。
4.待ち時間の短縮
薬局に到着した時点で電子処方箋がすでに送信されているため、薬の調剤準備があらかじめ進んでいることが多く、待ち時間の短縮が期待できます。特に、定期的に服用している薬を受け取る際には、迅速に対応してもらえることで通院の負担が減少します。
5.医療データの共有による安心感
電子処方箋を含む医療データのデジタル化により、患者様の服薬履歴が正確に記録されます。このデータが医療機関間で共有されることで、診察時に正確な薬の情報が医師に伝わり、より適切な治療が行われる可能性が高まります。これにより、患者様も自身の健康管理に対する安心感を持てるようになります。
まとめ
電子処方箋は、医療のデジタル化を進めるうえで欠かせない要素となりつつあります。患者様にとっては、安全性や利便性の向上が期待できるため、今後の普及が進むことで、医療サービスの質がより一層高まるでしょう。また、医療機関や薬局にとっても業務の効率化が図れるため、関係者全体にとってメリットが大きいと言えます。