医師の働き方改革は、医師のハードワーク、長時間労働を是正することにより、医師の健康確保や、労働環境の改善、医療サービスの質向上を目的とした重要な取り組みです。2024年4月から施行されたこの改革において、具体的にはどのような取り組みが求められるのでしょうか。そこで今回は、勤務医を雇用する医療機関における取り組むべきことについてご紹介します。
医師の働き方改革において取り組むべきこと
医師の働き方改革に関する検討会では、勤務医を雇用する医療機関において、以下6つの取り組みを推進しています。
1 | 医師の労働時間管理の適正化に向けた 取組 |
・まずは医師の在院時間について、客観的な把握を行う。 ・ICカード、タイムカード等が導入されていない場合でも、出退勤時間の記録を上司が確認する等、在院時間を的確に把握する。 |
2 | 36協定等の自己点検 | ・36協定の定めなく、又は定めを超えて時間外労働をさせていないか確認する。 ・医師を含む自機関の医療従事者とともに、36協定で定める時間外労働時間数について自己点検を行い、必要に応じて見直す。 |
3 | 産業保健の仕組みの活用 | ・労働安全衛生法に定める衛生委員会や産業医等を活用し、長時間勤務になっている医師、診療科等ごとに対応方策について個別に議論する。 |
4 | タスク・シフティング(業務の移管)の 推進 |
・点滴に係る業務、診断書等の代行入力の業務等については、平成19年通知(※)等の趣旨を踏まえ、医療安全に留意しつつ、原則医師以外の職種により分担して実施し、医師の負担を軽減する。 ※「医師及び医療関係職と事務職員等との間等での役割分担の推進について」(平成19年12月28日医政発1228001号) ・特定行為研修の受講の推進とともに、研修を修了した看護師が適切に役割を果たせる業務分担を具体的に検討することが望ましい。 |
5 | 女性医師等の支援 | ・短時間勤務等多様で柔軟な働き方を推進するなどきめ細やかな支援を行う。 |
6 | 医療機関の状況に応じた医師の労働時間 短縮に向けた取組 |
・全ての医療機関において取り組むことを基本とする1~5のほか、各医療機関の状況に応じ、勤務時間外に緊急でない患者の病状説明等を行わないこと、当直明けの勤務負担の緩和(連続勤務時間数を考慮した退勤時刻の設定)、勤務間インターバルの設定、複数主治医制の導入について積極的な検討・導入に努める。 |
また、これらの取り組みは、以下の考え方に基づいて、推進されます。
・勤務医を雇用する個々の医療機関が自らの状況を踏まえ、できることから主体的な取組を進めることが重要。
・医療機関における経営の立場、個々の医療現場の責任者・指導者の立場の医師の主体的な取組を支援。
・医師の労働時間短縮に向けて国民の理解を適切に求める周知の具体的枠組みについて、早急な検討が必要。
※より詳しい情報は厚生労働省Webサイトをご確認ください。
まとめ
医師の働き方改革により、医師の健康確保、労働環境の改善、医療サービスの質向上を実現するためには、まず前述した1~6の取り組みをできることから進めることが重要です。医師の労働時間を正確に把握することの難しさ等の課題があることも事実ですが、医師や医療機関だけでなく、社会全体が協力して取り組むことにより、持続可能な医療環境の実現が期待されます。